
一般社団法人和歌山青年会議所
2023年度 第67代 理事長
西 村 和 将

はじめに
「あなたがJCで一番学んだことは何ですか?」と問われれば、私は迷わず「感謝の心をもつことの大切さを学ばせていただきました。」と答えます。先輩、同期、後輩、出向先で出会った同志、運動に携わっていただいた全ての方々とのかけがえのない出会いに恵まれ、入会14年目となった今もなお学び続けています。もちろん日常生活においてもこの学びは存在しますが、見返りを求めず、奉仕の精神を信条に掲げるJCだからこそ多くの感謝すべき機会があり、より学びを深めることができたと考えます。感謝することでひとは謙虚になり、謙虚になることで素直になります。素直になることで他人の意見を心から受け入れることができるようになり、自己の成長へとつながります。では、感謝の心をもつためにはどうすれば良いのでしょう。それは、自分の周りで起こっている出来事に何一つ当たり前なことなど存在しない、という考えをもつことに尽きると思います。そうすることで、これまでの当たり前に有難みを感じ、有難うという感謝の心が芽生えます。
新型コロナウイルスの影響により我々を取り巻く環境は一変し、従来の当たり前が当たり前ではなくなりました。会いたい人に会うことですら制限がかかるこの時代に、JCとして運動できることが当たり前などという考えはもはや通用しません。今こそ、これまで気付かなかった多くの当たり前を見つめ直し、感謝の心をもってJC運動に邁進するべきであると強く思います。
多くの人に悲しみや苦しみをもたらしたこのウイルスは厄災に他なりませんが、一方でテレワークやWEB会議等のオンライン化が急速な発展を遂げました。我々の組織においても同様に、多くの事業にオンラインを取り入れ、ハイブリッドな運動を展開しています。如何なる時代背景においても、地域を牽引し続ける組織であるための有効な手段ではありますが、人と人が直接顔を合わせ触れ合う運動に勝るものはありません。安易にオンラインを取り入れるのではなく、それぞれの運動の本質を見極めるとともに、オンライン化することによるメリットとデメリットを十分に考慮したうえで、感謝を基軸としたひとを想い、まちを想う心ある運動を展開してまいります。
地域の架け橋となるまちづくり
和歌山青年会議所の目的は、明るい豊かな和歌山市を実現することです。しかし、我々だ
けの力ではこの目的を達成することは困難です。これまで多くのまちづくり事業を経験してきた中で、よくこんな言葉をかけていただきました。「JCさんであれば協力させてもらいます」これは、先輩諸氏が明るい豊かな和歌山市の実現を志し歩み続けてきた結果、地域から信頼され発せられた言葉に他なりません。この有難い強みを最大限に活かし、和歌山青年会議所だからこそできるまちづくりを推進するべきであると考えます。我々が市民・行政・他団体を結ぶ架け橋となり、和歌山市の魅力を最大限に発揮することで、まちに住み暮らす人々が郷土に誇りと自信をもち、次世代に誇ることのできる活力に満ち溢れた和歌山市の実現につなげます。そして、市民を含む本事業に関わった人々のまちづくりに対する当事者意識を醸成することで、一過性で終わることのないまちづくりの基盤を築きます。
次代を担う人財の発掘と開発
若者の県外流出や少子高齢化に伴う人口減少、さらには、新型コロナウイルスによる不透明な経済情勢の影響で会員数は減少の一途を辿っています。しかし、地域を巻き込む力強い運動を発信する組織であり続けるために、志を同じくする新たな人財の発掘は必要不可欠です。まずは、私自身が拡大運動に対し誰よりも真摯に向き合い取り組むことで、組織の拡大に対する気運を高めます。また、全員拡大を合言葉に、これまで培ってきた経験と各LOMの拡大成功例を参考に、現在の和歌山青年会議所に適した手法を用いることで、次代を担う新たな人財の発掘へとつなげます。
入会はあくまでスタート地点に過ぎません。入会歴の浅いメンバーが一日でも早く組織に馴染めるよう各々が配慮することで、心置きなく運動に取り組める環境を整えます。さらに、運動に対し理解を深めるために、自分たちで企画立案した研修事業を行うことで、地域を牽引するリーダーとしての意識を醸成し、自信と誇りを兼ね備えた次代を担う人財を開発します。
伝えるのではなく、伝わる戦略的な広報
地域の発展を志す我々の運動において、市民の共感は必要不可欠です。しかし、我々の運動を知らない、また我々の存在すら知らない方が数多くいるのが現状です。近年、SNSは様々な情報発信や収集ツールとして人々の暮らしに欠かせないものとなりました。我々もこれらのツールを利用し情報発信を行っていますが、自分たちが伝えたい内容だけを一方的に発信しても、受け取る側の興味を引くことはできません。伝えるではなく、伝わる広報戦略を立て、時代に即した発信方法を選択し、受け取る側の目線に立った内容を発信することで、有益な情報として認識されると考えます。和歌山青年会議所に関連する情報だけに固執せず、地域の発展や活性化につながる情報や、日常生活により身近な情報を発信することで、新たな入口から我々の運動を知っていただくとともに、共感を得る機会を創出します。
友情を学び、育む交流
地域を巻き込む力強い運動を発信するためには、青年会議所の対内外に関わらず友情を学び、育むことで団結力を高めなければなりません。和歌山青年会議所は長きにわたり、民間外交を通じて姉妹JCとの友情を深めてきましたが、新型コロナウイルスの影響により、近年は直接的な交流が困難な状況にあります。密に連携を図り、互いの国の状況や意思を共有し、今できる最善の交流手段を講じることで、新たな友情を育みます。
例会は、定款において出席義務が明記されているように、様々な運動を行っていく上で欠かすことのできない学びの場です。組織が一丸となり力強い運動を発信するために、普段とは違う交流を図ることで、メンバー間の絆がより深まります。また、先輩諸氏との交流を通じて、和歌山青年会議所の歴史と地域に対する想いを継承することで、今後の運動に更なる活力を生み出します。さらに、組織内だけではなく、市民と共に学びを共有する場を設け、我々の運動の一端に触れていただくことで、地域に対するJCの存在意義を高めます。
地域から信頼される強固な組織づくり
和歌山青年会議所が、地域から信頼される組織として運動を展開するためには、規律に基づく厳格な組織運営と、堅実な財務基盤を築くことが重要です。組織の方向性を決定するために総会を開催し、メンバーの意思統一を図ることで、組織の結束力が高まります。
財政面においては、限りある事業予算の中から費用対効果を検証するとともに、組織の透明性を保つために、厳正なるコンプライアンスの審査と管理を行うことで、地域から信頼される組織としての地位を確立します。
本年度も、和歌山ブロック協議会会長を筆頭に多くのメンバーが出向します。輩出LOMとして全力でサポートをすることはもちろんのこと、出向先で得た貴重な経験や知識を余すことなく共有することで、より強固な組織を構築します。
共感できる情報発信
和歌山青年会議所の運動はどれだけ市民に届いているでしょうか。私たちは日々処理できないほどの膨大な情報の中から取捨選択を行い、情報を取得しています。新聞やテレビのようなメディアを全く見ない世代も多く、マスメディアの独壇場だった時代は過ぎ去り、様々な手法やコミュニケーションツールが存在する今、届けたい方に確実に情報を届けるために戦略的に情報発信をしていかなければなりません。和歌山青年会議所やこの地域の魅力を伝えるための方法を考え抜き、実行・検証することでより効果的な情報発信方法を構築し、地域の内外から共感を得る広報手段を確立し市民に届けます。
結びに
地域を良くすることは決して容易なことではありません。だからこそ、我々青年経済人が率先して行動しなければならないのです。和歌山青年会議所は先輩諸氏から脈々と受け継がれてきた創始の精神に基づき、これまで数多くの運動を行ってきました。地域を牽引し、また地域に根差した団体として未来永劫続いていくために、時代に即した組織作りや事業構築は必要不可欠です。しかし、どんなに優れたアイデアや手法を用いても、そこに心がなければひとの心を震わすことはできず、共感を得ることはできません。どんなに同じ時間を共有しても、そこに心がなければ、友情は芽生えず、団結した組織にはなりません。いつの時代も、家族、社員、友人、メンバー、地域の方々、そして自分たちが住み暮らすまちに感謝し、ひとを想い、まちを想う心ある運動こそが確かな未来への一歩となり、明るい豊かな社会の実現を可能にすると確信します。